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ストロベリーショートパンチ

クリームをたっぷり塗った ストロベリーに ふざけたように光をビカビカ当てましょう すっかり空っぽになった中身には 砂糖をぎっしり詰め込みましょう なるべく砂糖だとわからないように 直接的ではいけないですから 少し 捻った風に おしゃれに 輝きを足します それは理屈じゃないんですよ 心が踊るように の話が わっからない人には 目に イチゴを詰めこんぢゃウゾ!

2022年6月 初版発行
電子書籍版: Amazon Kindle



ホウリの話

眩しい光が目に入る ホウリが気がつくとそこは海だった 海の真ん中 船もない そこにホウリは寝ていた 背泳ぎのようにして それよりも少しだけ水面に浮き出ている感じだった そんな寝方した覚えないのにな と思ったけれど ま そんなもんか と切り替えた 空は真っ青に晴れていて 雲ひとつない かもめが向こうの方にいる こうもりもいる 安心した 彼らを辿っていけばいつだって陸に行ける 乗ってきた船は難破したかなにかで沈んだ と海の中の魚が言う まだ聞いてないけど 親切な魚に手を振った つもりだったけど 動いたのは足だった 快適な海の上で伸びをして しばらくを存分に楽しんだ

2022年6月 初版発行
電子書籍版: Amazon Kindle



ピリッと唐辛子

ピリッと唐辛子を効かせて、ありもしない夢を追う。走っていく人々は後ろを知りもしないでいる。座っている私は、人参ばっかり食べている。小気味良いリズムで地団駄を歩いては、空中はひっくり返って寝そべっている。遠くに見える私たちは、一人の私に集約される。

2022年1月 初版発行
電子書籍版: Amazon Kindle



忍者のカカ

忍者のカカは海を眺めていた。カカは昔の夏からやってきたものだから、シュシュはそれが少し苦手だった。眩しすぎたのか、曇りすぎたのか、絶妙な妙を駆け抜けた。飛ばしたら困るんだよ。這うように、こっそり抜け出し這うように。滲んだ背中がふふ、と笑う。夜間のお湯はそろそろ湧きそうな気配を出して、砂がそれらを吸い込んでいった。目の間の少しの窪みにそれが湖を作りだしていたものだから、ねんごろにまで遊び初めてしまった。いい塩梅だね。」そう言うカカの方が、照れてしまった。だから、牛は南に向かって一斉に歩き始めたのかもしれない。うししと言う、彼らのいつも通りの冗談さえも、夜に溶けていった。雲はそれを見て、くももと行ったかと言うと、どうだろう。それは半紙に聞いてみると良い。

2022年2月 初版発行
電子書籍版: Amazon Kindle



むむ太郎

昔々はなかったので、今がずっと続いていた。それは、昔々からだった。むむ太郎は、そうやって起き抜けに独り言を呟いた。太陽は真ん中を差している。ずっと同じ場所にある。だから、むむ太郎たちはいつも移動する。そろそろ夕方になると思えば、風に乗って移動する。そうすると幾分か早いけれど、どうしても遅刻する子が出てくる。むむ太郎はそういう子たちのお守りをするのを生業としていた。だけどそれはお金のためではなくて、生業のために生業をするのだった。それは自分に喜びをもたらすものであった。お金のためのことはいまいち味がしないことを人類はとっくに気がついていた。気がついていたけれど、止められないと言い訳ばかりして、滅びた。あはは!とむむ太郎は歴史の本を読む。偉いらしい人は本気で笑いを取りにいっているのか、頭が狂っているのかのどっちかだと思った。涙を流して笑って聴いた。彼らは死んだけど、むむ太郎にとってそんなことはどうでも良かった。魂はお城にはいなかった。勝手に祭り上げるなら、勝手に祀り下げるのも自由だった。だから、そのお城を逆さまにして、上下左右に揺すって、自由にした。そんな風だから、むむ太郎には過去の人間たちの思いがまるで分からなかった。冒涜なのか、それとも冗談なのか、どこがどう捻くれてそうなってしまったのかは、秘密が関係している。味気ないパサパサの文化。何回読んでも全然わからないや。そう言って、数学の本を閉じた。歴史の本は、数学の本になっていた。気に入っていたのにな・・・。そう言ってその本をゴミ箱に捨てた。それが愛する本への最大の敬意だった。

2022年1月 初版発行
電子書籍版: Amazon Kindle



みかんの国

あっちの国にくるの?そんなことあるの?へぇ、じゃ、いいよ。行っておいでよ。あなたが選ぶんだからね。私はそっと見ているだけしかできないけれど、いつでもホットミルクなら入れますよ。だから、安心しておいてね。

さ、やってきましたみかんの国へ。ようこそようこそ、ようようこそ。このくらいの色使いで良いでしょうかと蜂が聞く。それを聞いても余裕の笑みで、みかん大臣が教えてくれる。大臣は実はあっちこっちにいるから、あまり特別なみかんではないけど、それでもやっぱり豆電球は可愛い灯を照らしてた。

そんな夢を見て起きた朝。いや、正確にはもう昼になる。なんせ二度寝の引力にはどうしてもね。ぼさぼさ髪を整えて、ホウリはお茶をすする。決まってそうするのが彼女のおはようの時間なので、鳥たちもそれをわかっている。庭にいる鳥には名前があって(それはちょっと特別なこと)、三羽の綺麗なカラスなのです。信じられないことに、ここでは当然のようにそうなのであって、君のいる国とは全然違うのかもしれないのは、こちらとしては困るばかりです。

2020年6月 初版発行
電子書籍版: Amazon Kindle

本について

人は言葉で考えるけど、現実は頭の中だけでは完結しない。
放っておくと人の言葉で一杯一杯になってしまい、自分の言葉を失ってしまうかもしれない。
意味のある言葉から逃げ出したい時に、どうぞ。

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手作りの紙本:ニカラ(新潟県佐渡市)
電子書籍版:Amazon Kindle