自宅にある錫の水差しを描きました。
実物の高さは15cm程度ですが、高さ1mのキャンバスなので、水差しは50cm程度に拡大されています。
大きさというものが人に与える影響は、なかなかどうしてバカにできないと思います。
ドアの大きさもペンの太さも、世界中大体同じです。
あらゆるものは人間の身体の大きさに合わせてあります。
例えば、家の中にあるものを10倍大きく作り変えると、大抵のものは実用性を失います。
中途半端に使えるサイズ感ではなくなり、全く使えない。
テレビが大きくなったら迫力があるかもしれませんが、コンセントも大きくなるので電気が通りません。
そうすると、ただ眺めるくらいしかできなくなります。
真っ白な巨大な部屋に置けば美術品に見えてくるはずです。
実用的でなくなったことで愛でるしかない。
だったら実用性がある元の大きさのままに愛でたら良いのに、なかなかそれはできない。
身近な人がいなくなって初めて大切さがわかるみたいな心理でしょうか。
近所のおばあさんが旅行に出かけている間、旦那さんが「おっかあがいなくて初めてありがたみがわかるなぁ」としみじみ言っていました。
自分がここに生きていて、愛でるものと出会う。
それは奇跡の出会いとも言えます。
つまり、世界はあらゆる奇跡で溢れています。
あとは、ただそのことに心を向けられるかどうか。
それが簡単だけど、難しい。
そういう矛盾と不完全さを楽しみたいと思います。
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サイズ:100x80cm
素材:キャンバスに油彩
制作年:2022年





